Classici giapponesi con furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Leggi 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 511.765 caratteri · 1011 schermate
死地におちた雨ヶ岳
一
つれているのは、そのときゆきがけの駄賃に、かどわかしてきた泣き虫の蛾次郎だ。
十五、六にもなりながら、人にかどわかされるくらいな蛾次郎だから、むろん、じぶんではかどわかされたとは思っていない。バカにしんせつで、じぶんを出世さしてくれるいいおじさんにめぐりあったと心得ている。
「蛾次郎、もうここまでくれば、どんなことがあっても安心だから、かならずしんぱいしないで元気をだすがいい」
半助がふりかえっていうと、あとから宿のにぎやかさに、キョロつきながら、のこのこと歩いてきた蛾次郎、すこし口をとンがらせながら、
「元気をだせったッて、元気なんかでやしねえや、お侍さんはよく腹がすかないねえ」
「ははア、どうもさっきからきげんがわるいと思ったら、空腹のために、ふくれているんだな」
「だってゆうべッから、一ッ粒もごはんを食べないんだもの、それで今朝になっても、まだ歩いてばかりいちゃあ、いくらおれだってたまらねえや」
「まて、もうすこしのしんぼうじゃ。向田ノ城へまいれば、なんでも腹いッぱい食わせてやる」
「もうだめだ、アア、もう歩けない、なにか食べなくッちゃ目がまわりそうだ……」