Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

Leggi 黒田如水 (くろだじょすい) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 163.639 caratteri · 325 schermate

Aozora Bunko

沐浴

一

一

湯殿口のわきに、筧の水がとうとうと溢れている。鵲のように行儀わるく辺りへ水を跳ね散らしながら、そこでごしごしと顔を洗っている者が官兵衛であった。

「――手拭。手拭」

頤の先から雫をこぼし、後ろを向いてこう喚くと、いま用の済んだ剃刀を盆にのせて、脱衣部屋の隅棚へ立って行った小坊主が、あわてて駆け戻って来て彼の前に手拭を捧げた。

そこへ最前の室木斎八が橋廊下の彼方にまた姿を見せて、

「ご家老。おはやくお臨み下さい。ご評議の席は、いつまで埒もなく、ただ誹り口や争論ばかりで収拾もつきません。殿にも、唯ひたすら、あなた様だけをお力としておられるらしく、しきりとお待ちかねでございます」

「いま参る。いま参る」

官兵衛は板敷に坐って、小坊主と対い合い、ひどく腫れ上がって来た左の瞼へ、膏薬を貼らせていた。さっき太鼓櫓で蜂に刺された痕である。

「よし、よし」と小坊主をねぎらい、やおら起ち上がって橋廊下を渡って行った。そして縁づたいに幾巡りしてようやく評定の間へもどって来た。

陽に遠いので、夏の日も涼しくはあるが、洞然として中は薄暗い。夜来の惰気と昏迷を、むうっとするばかり澱ませている。