Classici giapponesi con furigana
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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
Leggi 黒田如水 (くろだじょすい) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 163.639 caratteri · 325 schermate
五
そして、真四角な暗闇と板床であること。いつ眼をさましてみても、少しの変りもない。
変って来たのは、夏の陽気だけだ。
夏となって、皮膚の湿疹はよけいにひどくなり、髪の根には腫さえもってきたが、ただそれだけの歳月が、この牢獄の内にも過ぎたことは慥かである。――時の歩み以外に待つものとては何もない。
「……夢か。……気のせいか?」
彼はまた、ぐたと、うすい夜具と枕の上に、その頭を寝かせた。
そして、しばし。
ただ一つの明り窓からかすかに聞える藤の葉の風を、聴くともなく耳にしていたが、愕然と、また跳ね起きた。
「気のせいとも思われぬが。……はて。ふしぎな声を聞くものだ」
よろりと、起ちかけた。――起てないのである。体じゅうの腫物に、削りとられた筋肉は、起って歩く力をすらもう彼の、あの健康な体から奪っていた。
「――夢ではない」
彼は、ひかん病の赤児みたいに、そこの大床を、這い出した。
が、自らぎょっとして、横の、頑丈極まる格子組みの方を、窺うように振り向いた。そこの境にはいつも番の武士が交代で付いているからだった。
――遠くに、赤い鉄脚の灯し火が見える。いないようだ。