Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
「ところがそうじゃありません」
お人好しの率八は、いつのまにか、馬春堂の口車とも気がつかずに、膝を進めていましたが、それと共に、障子を閉てた隣の部屋に微かに寝息をかいていたお蝶も、ふッと眼をさまして、枕から顔をもたげました。
時の移るのも忘れて、お喋舌りをしていた率八が、障子に蔭る陽脚に驚いて、蒼惶と馬春堂の家を辞して帰るとすぐに、お蝶も外へ急ぎました。
隣の部屋で、率八の話に聞き耳をたてていた間に、身装も作っていたものとみえ、いつもの黒頭巾に男袴、腰に細身の大小を落としている。
町を歩いてゆくうちに、案外油を売っていた時間が長かったことに気がついた率八は、にわかに慌てた足どりで、三筋町から新堀端に沿い、蔵前の通りをまっすぐに出て、見付から横山町の抜け道にはいります。
やがて、辿りついた所は、浜町の片端れ、その辺りまだ空地や空井戸や古池などが多く、大川端をすぐ前にして、四、五軒の紙漉小屋と、漁師の家などが散在しているその中の一軒家。
そこが率八の家とみえて、
「おっかあ、今帰ったよ」
声をかけると、井戸端で炊ぎの米を磨いでいた彼の女房らしい女と、その女の周囲に寄りたかッていた幼い子供達が、一斉に彼を迎えました。