Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

「やっ?」

足を止めた万太郎は、もう屡見ているので、月明りの遠目にもその薬草園の人影を、いつぞや取逃がした優形の覆面と見て、

「金吾、あれはよもや、吉宗ではあるまい」

姿を隠してささやきました。

前の失敗にこりているので、金吾も充分に注意しながら、藪の蔭を這って近づいてみると、どうもいつぞや広芝で組伏せた者とは、その柔軟な輪郭が違っています。

「あっ……」

途端に、勘のするどい優形の男は、藪の枯れ葉がカサリと鳴ったかすかな気配に驚いて、忽ち、飛鳥のように人参畑を横に切って逃げ出しました。

が――そこは枯れ木の柵があり、柵の外には万太郎がひそんでいたので、

「待っていた!」とばかり、彼がそこをつき破って出て来るところを、大手をひろげて飛びかかる。

――と思うと一閃の流刃が、月光を切って彼の真ッ向へ鳴って来ました。かわしましたが万太郎は、その切ッ先に手の甲を掠められて、ピッと散った冷たいものに、はッと気をすくめると、そのせつなに、艶めいた梅花香の薫りがプンと鼻先を一過して、相手の影は風を残して疾走している。

「ええ、またしても!」

今は、意地です。

指の先から血を散らしながら、追おうとすると、十歩ばかりの間隔の先で、屹と、振顧った覆面の白い顔が、自分の方を睨むかと思われた途端に――