Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
と伊兵衛はそろそろ起上がッて、体じゅうを耳にしました。
いつもの今井二官とは打って変って、ヨハンといい争った後、ただならぬ血相で家へ馳けこんで来たかれは、
「ウーム、こんなもの!」
やにわに机の上の物を、座敷じゅうへ取って投げ散らし、
「これも無駄な記録! こんな物も今は見るのも腹立たしい」
日記やそこらの書物まで引き破った上、かれが多年あれほど精を凝らしてまとまりかけている辞書の草稿を、あたかも、その快味をむさぼるように、惜し気もなく片っ端からズタズタに裂いては捨て、破ッては部屋いッぱいに撒きちらかす。
「あっ――お父さんは?」
何となく気が晴れぬまま、勝手へ出てぼんやりと、黄昏に立っていた娘のお蝶は、ひょッと障子をあけて、そのていを一目見るなり仰天して、
「ど、どうしたんですお父さん――もしッお父さんてば! お父さんてば!」
立ち上がる父のうしろから、力いッぱい抱き止めて、
「気が狂ッちゃいやですよッ、気をたしかにして下さいッ、気を……お父さーんッ」
さすがに声もおろおろと懸命になって、この時ばかりは混血児お蝶も、純真純情な一個の小娘になって泣きだしました。