Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

「どこだ、どこだ」

次郎はいよいよ血眼となって、

「――お嬢さまア、お嬢さまア」

遂には、波にひびくその絶叫も、涙ッぽい訴えと変って、刻々と暗のこくなる海のいろに、思わず深い溜息をもらしている。

すると――向うで、

「おのしは、次郎さんでねえか」

と、磯の石が呼びました。

磯の石が声をかけるはずはないが、うす暗い海辺にかがんでいたひとりの海女が、そこを立って歩きだすまでは、一個の磯の石としか次郎の目には見えなかったので――

「あ……」

驚いて近づいてゆくと、ふだんこの辺でよく顔を合せている海女です。

「おばさん、教えてくンないか」

次郎の問いは唐突です。

「おめえ、それで飛んできなしたか」

「居なくなッちゃッたんだよ、お嬢さまが。――おばさん、おいらのうちの月江様を知ってんなら、教えてくんなよ」

「大変だぞ、おめえ」

「えッ」

次郎はもう飛び立ちそうな様子をして、

「大変て、ど、どうしたンだい」

「悪いやつに追われて、魚見小屋の中へ連れこまれて行きなしたようだ」

「見ていたのか、おばさんは」

「札つきの悪者ばかりが、のッそりのッそり、藤屋のお客さんのあとをつけて行くので、なんか悪いことがなけりゃあいいがと、さッきからここで案じていたところ……おめえよく来なした、早く行って見てあげるといい」