Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

「濁り橋のそばに蔦屋という旅籠がございましょう」

「ウム、ある」

「そこへ江戸の親分の言伝をしに行っただけの事なんで、へい」

「先はたしか、お蝶という女だったな」

「おそろしい地獄耳でございますね」

「そして、その言伝というのは」

「そ、そいつだけは、勘弁してください」

逃げ腰になる八助のえりがみを取っておさえて、九兵衛は道中差の柄がしらを彼の鼻づらへこすりつけながら、

「言わねえな……この野郎」

「言います……言いますから手をすこしゆるめておくんなさい。あっ……血が」

八助かふるえ上がったのも無理ではありません。顔をこすられた刀の柄に、ねっとりとねばるものを感じたので、何気なく手をやってみると血のかたまりです。

「うるせえ、早く言え」

と九兵衛の力は仮借がない。

「実はなんです、江戸の親分のいいつけで、その蔦屋にかくれているお蝶さんていう娘に、呼び出しをかけたんでございます」

「なんと言って?」

「あの娘のさがしている乳母のお咲っていう者の名を騙りまして」

「ウム」

「この間うち、お嬢様のお姿を町で見かけて驚きました。そのせつ、おことばをかけようと思いましたが、師の僧のお供をしていたので、ついそのまま行きちがいました」