Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

汗ばんだ額ぎわの白粉を小菊紙でたたいて、日傘をたたみながら暫くそこに休んでいますと、どこかでかすかな人声が流れました。

「次郎や――次郎やア……」

それは肉声です、人が人をよぶ声です。

ふと、その遠い所に、おりんが四方をのび上がって見ますと、彼方の芒の道を分けて、土民の女房らしい年増の女が、

「次郎やア……」

と、哀傷的な声を長くひいて、しきりとその辺りを見廻しています。

やがて、おりんも日傘を手に小走りに駆けだしていました。近寄って、年増の女を見ると、彼女の想像にたがわず、それは野鍛冶の半五郎の妻――かの高麗村の次郎の母親です。

「お常さんじゃありませんか」

声をかけると、女はびっくりしたように、取り乱した姿を気まりわるげに、

「あ。おりん様でしたか」

そこへ屈んでしまいます。

「次郎さんを探しているんですか」

「はい。次郎の居所を知っていたら、おりん様、どうか教えてやってくださいまし」

お常は垢によごれた袖口を目に当てて、さめざめとそこに泣いている。

「私もお嬢様の居所をさがしに出て来たところなんです。じゃ次郎さんも、どこへ行ったか分らないのですね」

「あんな不孝者はございません」