Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
かかるうちに、錦霜軒の前の臥龍梅には、ぼちぼちと白い花のほころぶ頃となって、月も如月と変って行く。
怖い誘惑
少し時日をさかのぼって、話はここに切支丹屋敷のお蝶の事にうつるとする。
――そこでは彼女が、秩父天童の盆地を脱出してから、行く先々の宿場や街道の辻で、口の悪い馬方だの百姓の子らに、容貌の異うところを気がつかれるたびに、
「碧眼の女よ」
「混血児のむすめよ」
と指さされて、食に困り、宿に迷い、浮世の悲雨惨風にたたかれ通して、みじめな彷徨いを続けた後流れ流れて、元の江戸へめぐり帰って来た褪せ窶れた姿が、歳晩の巷に見出されます。
「私はほんとに、お馬鹿ちゃんだわ」
江戸へはいると、草市よ羽子板市よと、あわただしく雑沓している都会の雰囲気が、温い気持に彼女をつつんで、四囲の人の目も冷ややかに光る、地方を追われ通して来たお蝶をほっと息づかせて、
「――なぜ私は、甲州へなど逃げたんだろう。やはり江戸が何処よりも一番いい。通る人だって、口をきく人だって、私の睫毛や眼の底なんか見ていやしないもの……」
ただ怖いのは宗門役人です。それと辛いのが、帯や裾のほころびている今の着物です。