Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Leggi 源頼朝 (みなもとよりとも) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 306.118 caratteri · 613 schermate

Aozora Bunko

「どうしてここを降るか」

重忠も、また日頃我武者をもって任じる三浦義連も――凝然と下を見ているだけだった。

義経の馬の口輪をしかと握っていた佐藤継信と忠信の兄弟も、

「これは」

と、五、六歩駒をうしろへひいて、

「如何召さるお心?」

と、主の面を仰いだ。

義経は、しきりと唇をかんでいた。彼もかくまで嶮しい所と考えていなかったかもしれない。

元より彼は、一ノ谷のうしろの嶮峻は覚悟していた。そこへ向う非常識も弁えていた。けれど彼は、敢えて、常識を無視して、非常識へ突進してきた。

平常の常識の程度は、敵にもある常識である。

人の眼と智がみな、

不可能!

と、極めているなかに可能を見出すことこそ、非常な時の常識というものではあるまいか。

「…………」

義経はしきりとまだ唇をかんでいる。ともすれば、平常の常識から不可能としてしまい易い自己の観念に対して、強く唇を噛むのであった。

「鷲尾。鷲尾」

案内して来た例の若者をかえりみて訊ねた。

「この山を鹿は通わぬか」

「鹿? ……。ああ鹿ですか。冬近くなると丹波の鹿が、よく一ノ谷へ越えます。春暖かになるとまた、一ノ谷から丹波へ帰って行くので」