Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
妬まるるは兼輔の誉れであろうよ。それがために禍いを受くるも本望……と我らはそれほどまでに思うている。恋には命も捨てぬものかは」
「そりゃお身の言わるる通りじゃ」と、玉藻は低い溜息をついた。「じゃというて、お身さまに禍いの影が蛇のように付きまとうているのを、どうしてそのままに見ていらりょう」
「じゃによって訊いている。その禍いの影とはなんじゃ。禍いの源はいずこの誰じゃ」
「少将どのじゃ」
「実雅か」と、兼輔は眼をみはった。
少将実雅はかねて自分に恋していたと玉藻は語った。恋歌も艶書も千束にあまるほどであったが、玉藻はどうしてもその返しをしないので、実雅はしまいにこういう恐ろしいことを言って彼女をおびやかした。自分の恋を叶えぬのはよい。その代りにもしお身が他の男と恋したのを見つけたが最後、かならずその男を生けては置かぬ。実雅は彼と刺し違えても死んで見するぞと言った。殿上人とはいえ、彼は代々武人である。殊にいちずの気性であるから、それほどのこともしかねまい。自分が兼輔のために恐れているのはその禍いであると、玉藻は声をひそめて話した。
そう言われると思い当たることがないでもない。