Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
「あれは右衛門尉成景というお人じゃ」と、千枝太郎は彼のうしろ姿を見送って教えた。
「見るから逞しそうな。さすがは少納言殿のお内に侍う人ほどある」と、玉藻はうなずいて、さてまた語り出した。
「のう、千枝太郎どの。くどくも言うようじゃが、お前どうでもわたしに逢うのはいやか。今宵にはかぎらぬ、あすでもあさってでも……。関白殿のお屋形へまいって、玉藻に逢おうと言うてくれたら、わたしはきっと首尾して出る。これ、どうでもいやか。どうでも応とは言われぬか」
彼女はくれないの唇を男の耳にすりつけて囁いた。
女のうす絹に焚きこめた甘いような香の匂いは千枝太郎のからだを夢のように押し包んで、若い陰陽師の血は俄に沸き上がった。強い夏の日を仰ぐ彼の眼はくらくらと眩んできて、彼は真っ直ぐに立っているに堪えられないように、思わず女の腕にもたれかかると、玉藻はほほえみながら彼を軽くかかえてやった。そうして又、甘えるようにささやいた。
「さりとは情のこわい人じゃ。むかしの藻を忘れてか」
邪魔なところへ右衛門尉成景が再び出て来た。彼は玉藻に向かっておごそかに言った。
「主人の少納言、あいにくの客来でござれば、御対面はかなわぬとの儀にござる。