Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
一匹でない、四方八方から群がって来て、何者をか取り巻いているらしかった。
見ると眼の前には一人の女が立ちすくんでいた。被衣を深くして、しかもこちらを背にして立っているので、その顔はもとより判らなかったが、それが玉藻であるらしいことは直ぐに千枝太郎の胸に泛かんだ。彼女はまだここらをさまよっていたらしく、あまたの犬は牙をむき出して彼女を遠巻きにしているのであった。犬のなかには熊のように大きいのもあった。虎のように哮っているのもあった。しかしかれらは、なんの武器をも持たない女ひとりを噛み倒すほどの勇気もないらしく、唯すさまじい唸り声をあげて、いたずらに地上に映る女の影に吠えているばかりであった。
孱弱い女子が群がる犬に取り巻かれている。それが見ず識らずの人であっても見過ごすことは出来ないのに、まして相手は玉藻であるらしいので、千枝太郎の胸は跳った。彼はまず路ばたの小石を拾って真っ先に進んでいる犬の二、三匹を目がけてばらばらと打ち付けながら、つかつかと駈け寄って女を囲った。それでも犬はなかなか怯まないらしく、一、二間さがったままでまだ執念ぶかく吠えつづけているので、千枝太郎もじれた。