Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate

Aozora Bunko

「なり申さぬ。われわれここを固めている間は、ひと足も門内へは……」

「ならぬと言わるるか」

「くどいこと。なり申さぬ」

「どうでもならぬか」と、玉藻もすこし気色ばんだ。

遠光はもう返事もしないで、相手の瞳を一心に睨んでいると、玉藻はなんと感じたか俄に扇でそのおもてを隠しながら高く笑った。彼女は眉をあげて山門の方をあざけるように見返りながら、再びしずしずと牛車のにはいって、そうして、牛車を戻せと低い声で命令すると、牛はやがてのそのそと動き出して、轅は京の方角へむかって行った。

と思うと、白羽の矢が一つ飛んで来て、青糸毛の車蓋をかすめてすぎた。その響きにおどろかされて供の侍どもはあっと見かえると、二の矢がつづいて飛んで来て、その黒い羽は後廂の青いふさを打ち落として通った。

「や、遠矢じゃ。さりとは狼藉……」

立ちさわぐ侍どもを玉藻は簾のなかから制して、牛車の大きい輪は京をさして徐かに軋って行った。その青い影のだんだんに遠くなるのを見送りながら、山門のかげから頼長が出て来た。あとに続いて弓矢を持った二人の侍があらわれて、いずれも残念そうに唇を噛んでいた。玉藻がきょうの参詣を知って、頼長は先き廻りをして先刻からここに待ち受けていたのである。