Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
きのうの小源二の話で、師の泰親の無事であることが判ると共に、彼は俄に師匠がなつかしくなって、直きじきの対面は許されずとも、せめてよそながら屋敷の姿を窺って来たいと思い立ったのである。彼は屋敷の前に近づいて、忍ぶように内を覗くと、軒に張り渡された注連縄が秋風に寂しくゆらいで、見おぼえのある大きい桐の葉が蝕ばんだように枯れて乾いて、折りおりにかさこそと鳴っていた。それを仰いでいるうちに、言い知れない悲しさと懐かしさとが胸いっぱいになって、彼の眼はおのずとうるんできた。彼は思わず土にひざまずいて、よそながら師匠に無沙汰の罪を詫びていると、その頭の上で不意に彼の名を呼ぶ者があった。おどろいて振り仰ぐと、それは兄弟子の泰忠であった。
「お身がもとの烏帽子折りになったということは、よそながら聴いていた。どうじゃ、変わることはないか」
久し振りで兄弟子の優しい声を聴いて、千枝太郎はいよいよ悲しくなった。彼はにじみ出す涙を両袖で拭きながら答えた。
「お身も変わることが無うて何よりじゃ。御勘当の身では何をすべきようもないので、よんどころなしに旧のなりわい、むかしの朋輩に顔を見らるるも恥ずかしい。