Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
どんな出世になるか知らぬが、お身もやめい。あのような所へは行くものではないぞ」
いくら強請んでも動きそうもないので、千枝太郎もあきらめてそこを出た。今夜は薄い月が行く手を照らして、もう木枯らしとでもいいそうな寒い風が時どきに木の葉を吹きまいて通った。千枝太郎はその風にさからって森の方へ急いで行った。大きい杉のかげに身を寄せて、彼はゆうべと同じようにふたほども待ち暮らしたが、折りおりに落葉のころげてゆく音ばかりで、土の上には犬一匹も通らなかった。
「今夜も無駄か」
彼は失望してもう引っ返そうかと思っている時に、京の方角から牛車の軋る音がぎいぎいと遠くきこえた。木蔭からそっと首をのばして窺うと、牛飼いもない一輌の大きい車が牛のひくままにこちらへ徐かにきしって来た。薄い月は高い車蓋を斜めにぼんやりと照らしているばかりで、低く這って来る牛の影も、月に背いた車の片側も、遠くからはっきりとは見えないので、さながら牛のない片輪車が自然に揺らめいて来るかとも怪しまれた。千枝太郎は身を固くして、この怪しい車の音に耳を澄ましていた。
車はだんだんに近づいて、棟の金物の薄くきらめくのも見えるほどになった時に、もう待ち切れなくなった千枝太郎は木のうしろから衝とあらわれて、覚束ない月の光りでその車の正体を見届けようとすると、不思議