Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
その途中で彼は又、あらぬ迷いが湧いて来た。自分もいったんはそう疑い、師匠は確かにそう言い切ったのであるが、車のぬしは果たしてかの玉藻であろうか。自分の見た女の顔はどうも衣笠に似ているらしく、殊にその身内からはなんの光りも放っていなかった。勿論、この場合には、自分の目よりも師匠の明らかな眼を信じなければならないと思いながらも、彼はまだ消えやらない疑いを解くために、その足を七条の方角へ向けた。
三浦の屋敷へ行って、家来に逢ってきくと、やはりきのうと同じ返事で、その後なんにも変わったことはないと言った。
「娘御はゆうべ何処へかお忍びではござりませぬか」と、千枝太郎はそれとなく探りを入れてみた。
「なんの、お慎みの折柄じゃ。まして夜陰にどこへお越しなさりょうぞ」と、家来は初めから問題にもしないように答えた。
これを聞いて千枝太郎も安心した。もう疑うまでもない。車のぬしを衣笠と見たのは自分の僻目で、彼女はやはり玉藻であったに相違ない。それにしては、わらわに恋するなど及ばぬこと――この一句の意味がよく判らなかった。玉藻は自分の方から一度首尾して逢うてくれとたびたび迫り寄って来るのでないか。