Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
「お前はそれほどにわたしが恋しいか。人間を捨ててもわたしと一緒に棲みたいか」
「おお、一緒に棲むところあれば、魔道へでも地獄へでもきっとゆく」と、彼は堪えられない情熱に燃える眼を輝かして言った。
玉藻は美しく笑った。彼女はしずかに扇をあげて、自分の前にひざまずいている男を招いた。
ひとりの若い旅びとが殺生石を枕にして倒れているのを、幾日かの後に発見した者があった。その旅びとは微笑を含みながら平和の永い眠りに就いているらしかった。しかし怖ろしい墓場へ踏み込んで、その亡骸を取り片付ける者もなかったので、彼はそのままにいつまでも捨てて置かれた。そのうちに寒い冬が奥州の北から押し寄せて来て、那須野ヶ原も一面の雪の底に埋められた。
あくる年の春が来て、殺生石は雪の底から再びその奇怪な形をだんだんに現わしたが、旅びとの姿はもう見えなかった。彼は融ける雪と共に消えてしまったのかもしれない。
それから十年も経たないうちに、都には二度の大きい禍いが起こって、みやこは焚かれた。大勢の人は草を薙ぐように斬り殺された。保元と平治の乱である。しかも古来の歴史家は、この両度の大乱の暗いかげに魔女の呪詛の付きまつわっていることを見逃しているらしい。