Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
「身分は論ぜぬと申しながら、いらぬ詮議をするかとも思おうが、これは関白殿下の御覧に入るる歌じゃ。一応は詠人の身分を詮議し置かないでは、わしの役目が立たぬ。父は誰であれ、母は何者であれ、恥ずるに及ばぬ。憚るにおよばぬ。ただ、正直に名乗ってくるればよいのじゃ」
「母はもうこの世におりませぬ。父の名をあからさまに申し上げませいでは、歌の御披露はかないませぬか」と藻は聞き返した。
「かなわぬと申すではないが、まずおのれの身分を名乗って、それから改めて披露を頼むというがひと通りの筋道じゃ。父の名は申されぬか」
「はい」
「なぜ言われぬ。不思議じゃのう」と、師道はほほえんだ。「ははあ、聞こえた。父の名をさきに申し立てて、もしその歌が無下に拙いときには、家の恥辱になると思うてか。年端のゆかぬ女子としては無理もない遠慮じゃ。よい、よい。さらばわしも今は詮議すまい。何者の子とも知れぬ藻という女子を相手にして、その歌というのを見て取らそう。料紙か短冊にでもしたためてまいったか」
「いえ、料紙も短冊も持参いたしませぬ」と、藻は恥ずかしそうに答えた。
師道はすぐに硯や料紙のたぐいを運ばせた。