Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate

Aozora Bunko

彼は藻が見違えるような美しい衣を着て、見馴れない侍に連れてゆかれるのを見て、驚いて怪しんでその子細を聞きただそうとしたが、藻は彼には眼もくれないで行き過ぎてしまった。侍は扇で彼を打った。くやしいと悲しいとが一つになって、彼の眼にはしずくが宿った。彼は藻のひと群れのうしろ姿が遠くなるまで見送っていたが、それからすぐに藻の家へ行った。藻が関白の屋形へ召されたことを父の行綱から聞かされて、彼もようやく安心したが、屋形へ召されてからさてどうしたか、彼の胸にはやはり一種の不安が消えないので、家へ帰っても落ち着いていられなかった。

「病みあがりじゃ。もう日が暮るるにどこへゆく」と、叔母が叱るのをうしろに聞き流して、千枝松はそっと家をぬけ出した。

もう申の刻を過ぎたのであろう。綿のような秋の雲は、まだその裳を夕日に紅く染めていたが、そこらの木蔭からは夕暮れの色がもうにじみ出してきて、うすら寒い秋風が路ばたのすすきの穂を白くゆすっていた。千枝松はけさとおなじように枯枝を杖にしてたどって来ると、陶器師の翁は門に立って高い空をみあげていた。

「千枝まよ。また来たか。藻はまだ戻るまいぞ」