Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
のう、爺さま」
人の好い翁は隣りの娘の讒訴をもう聞き飽きたらしい。ただ黙ってにやにや笑っていた。その罪のない笑顔と、意地悪そうな婆の皺づらとを見くらべながら、千枝松はやはり黙って聞いていると、婆は更に唇をそらせて、そのまだらな歯をむき出した。
「まだそればかりでない。わしは不思議なことを見た。おとといの宵に隣り村まで酒買いにゆくと、そこの川べりの薄や蘆が茂ったなかに、藻が一人で立っていた。立っているだけなら別に子細もないが、片手に髑髏を持って、なにやら頭の上にかざしてでもいるような。わしも薄気味が悪うなって、そっとぬき足をして通り過ぎた」
その髑髏はかの古塚から抱えてきたものに相違ないと千枝松はすぐに覚ったが、藻がいつまでもそれを大切に抱えていて、なぜそんな怪しい真似をしていたのか、それは彼にも判らなかった。
「わしもその後しばらく藻に逢わぬが、毎晩そのようなことをしているのであろうか」と、千枝松は心もとなげに婆に訊いた。
「わしも知らぬ。わしの見たのはただ一度じゃ。なぜそのようなことをしていたのか、お前逢うたらきいてお見やれ」
「はは、なんのむずかしく詮議することがあろうか」