Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
お前はわしに偽ったか」
彼はこの問題をとらえて来て、女の違約を責める材料にしようと試みたが、それは手もなく跳ね返された。
「そりゃ御奉公しようとも思わぬ昔のことじゃ」
「その昔を忘れては済むまい」
暗いなかでは女の顔色を窺うことはできないので、千枝松はじれて藻の手をつかんだ。そうして隣りの陶器師の門までひいてゆくと、炉の火はまばらな簾を薄紅く洩れて、女の顔が再び白く浮き出した。千枝松はその顔をのぞき込んで言った。
「これほど言うてもお前はきかぬか。わしの頼みを聞いてくれぬか。のう、藻。わしは来年は男になって、烏帽子折りの商売をするのじゃ。わしが腕かぎり働いたら、お前たち親子の暮らしには事欠かすまい。宮仕えなどして何になる。結局は地下で暮らすのが安楽じゃ。第一おまえが奉公に出たら、病気の父御はなんとなる。誰が介抱すると思うぞ。わが身の出世ばかりを願うて、親を忘れては不孝じゃぞ」
第一の抗議で失敗した彼は、さらに孝行の二字を控え綱にして、女の心をひき戻そうとあせったが、それもすぐに切り放された。
「わたしが奉公するとなれば、父さまの御勘気も免るる。殿に願うて良い医師を頼むことも出来る。