Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
「そなたと仲好しであった藻は、関白殿の屋形へ召されて行った。わしもまだ起き臥しも自由でない身の上で、介抱の娘を手放してはいささか難儀じゃと思うたが、第一にはあれの出世にもなること、ひいてはわしの仕合わせにもなることじゃで、思い切って出してやった。行く末のことは判らぬが、一度御奉公に召されたからは五年十年では戻られまい。そなたも藻とは久しい馴染みじゃ。娘の出世を祝うてくりゃれ」
千枝松はもう返事が出なかった。聞くだけのことを聞いてしまって、彼はすぐに外へ出ると、門の柿の梢には鴉のついばみ残した大きい実が真っ紅にただれて熟して、その腐った葉が時どきにはらはらと落ちていた。彼は陰った眼をあげてその梢をみあげているうちに、熱い涙が頬を伝って流れ出した。
藻は自分を捨てて奉公に出てしまった。五年十年、あるいはもう一生戻らないかもしれない。それを思うと、彼はむやみに悲しくなった。来年から一人前の男になって烏帽子折りのあきないに出るという楽しみも、藻というものがあればこそで、その藻が鳥のように飛んで行ってしまって、再び自分の籠には戻らないと決まった以上、自分はこの後になにを楽しみに働く。