Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
いっそ言おうか言うまいかと迷いながら、彼は相手を焦らすように空うそぶいた。
「そりゃ人違いであろう。われらは昼間からこの座を一寸も動いたことはござらぬ」
「いや、そりゃ嘘じゃ」
女房たちは三方から彼を取りまいて、口をそろえて燕のようにさえずった。
「昼間は勿論のこと、日が暮れてからも庭先きをうろうろと……。現に今もここをぬけ出そうとせられたところじゃ」
「それ見い」と、実雅は鼻の下の薄い髭をこすって又睨んだ。「それでもお身にうしろ暗いことがないというか」
「いかに責められても、知らぬことは知らぬのじゃ」と、兼輔は笑いながら席をはずして立とうとすると、女房たちの白い手は右ひだりから彼の袂や裳にからみついた。
「いや、逃がさぬ、今度はわたしたちが詮議する。さあ、誰と語ろうてござった。それを聞こう。それを打ち明けられい」
妬み半分と面白半分とで、女たちは鉄漿黒の口々から甲高の声々をいよいよ姦しくほとばしらせた。かれらは兼輔の晴れの直衣をあたら揉み苦茶にするほどに、袖や袂を遠慮なしに掴んで小突きまわして、さあ白状しろと責めさいなんだ。女の袖に焚きしめた香の匂いや、髪の匂いや油の匂いや、それが一緒に乱れて流れて、女の匂いに馴れていた兼輔ももうむせ返りそうになってきた。