Classici giapponesi con furigana
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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
Leggi 黒田如水 (くろだじょすい) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 163.639 caratteri · 325 schermate
官兵衛はそう見すましてからまた、窓の下まで這った。
そしてそこの板壁へ、耳も体もつけて、しばらく心を落着けていると、やはりまぎれなき人声がする。しかも自分の名をよんでいるように聞えるではないか。
実に、絶えて久しく忘れていた体じゅうの血が、突然、ぐらぐらと煮えて来るような気がした。正しく、自分を呼んでいる。――官兵衛という名の者がこの附近に二人といようわけはない。
「――な、なんだっ。だれだっ」
声いっぱい返辞したい気がした。けれど、その意欲を発することは危険極まるものであるはいうまでもない。
彼はうろうろした。
体はきかない。声は出せない。
――ふと、枯木のような腕を上へ伸ばした。その手がつかんだのは、窓から這い入っていつか伸び放題の姿態をしていた藤蔓の先であった。
彼は、それを、下から引いた。
高窓の際に仰がれる藤の枝は、為に、ゆさゆさ揺れた。その揺れに――ただの風ではない意志をあらわすために――彼は長く引いたり小刻みに引いたりした。
すると、外から呼ぶ者の声にも、ただならぬ感情が加わってきた。そして前よりもはるかに、はっきりと聞きとれた。
「――官兵衛さまですか。