후리가나로 읽는 일본 고전
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 183,656자 · 363화면
それは満腹のためばかりでなく、右の奥の下歯が俄かに痛み出したのである。久し振りで種々の御馳走にあずかって、いわゆる餓虎の肉を争うが如く、遠慮もお辞儀もなしに貪り食らった祟りが忽ちにあらわれ来たったものと知られたが、軍医部は少し離れているので、薬をもらいに行くことも出来ない。持ち合せの宝丹を塗ったぐらいでは間に合わない。私はアンペラの敷物の上にころがって苦しんだ。
歯はいよいよ痛む。いっそ夜風に吹かれたらよいかも知れないと思って、私はよほど腫れて来たらしい右の頬をおさえながら、どこを的ともなしに門外まで迷い出ると、月の色はますますあかるく、門前の小川の水はきらきらと輝いて、堤の柳の葉は霜をおびたように白く光っていた。
わたしは夜なかまでそこらを歩きまわって、二度も歩哨の兵士にとがめられた。宿へ帰って、午前三時頃から疲れて眠って、あくる朝の六時頃、洗面器を裏手の畑へ持ち出して、寝足らない顔を洗っていると、昨夜来わたしを苦しめていた下歯一枚がぽろりと抜け落ちた。私は直ぐにそれをつまんで白菜の畑のなかに投げ込んだ。そうして、ほっとしたように見あげると、今朝の空も紺青に高く晴れていた。