후리가나로 읽는 일본 고전
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 183,656자 · 363화면
箙の梅
わたしの門前は東西に通ずる横町の細路で、その両端には南へ登る長い坂がある。東の坂はくらやみ坂、西の坂は狸坂と呼ばれている。今でもかなりに高い、薄暗いような坂路であるから、昔はさこそと推し量られて、狸坂くらやみ坂の名も偶然でないことを思わせた。時は晩秋、今のわたしの身に取っては、この二つの坂の名がいっそう幽暗の感を深うしたのであった。
坂の名ばかりでなく、土地の売り物にも狸羊羹、狸せんべいなどがある。カフェー・たぬきと云うのも出来た。子供たちも「麻布十番狸が通る」などと歌っている。狸はここらの名物であるらしい。地形から考えても、今は格別、むかし狐や狸の巣窟であったらしく思われる。私もここに長く住むようならば、綺堂をあらためて狸堂とか狐堂とか云わなければなるまいかなどとも考える。それと同時に、「狐に穴あり、人の子は枕する所無し」が、今の場合まったく痛切に感じられた。
しかし私の横町にも人家が軒なみに建ち続いているばかりか、横町から一歩ふみ出せば、麻布第一の繁華の地と称せらるる十番の大通りが眼の前に拡がっている。ここらは震災の被害も少なく、もちろん火災にも逢わなかったのであるから、この頃は私たちのような避難者がおびただしく流れ込んで来て、平常よりも更に幾層の繁昌をましている。