후리가나로 읽는 일본 고전
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
中里 介山의 大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 262,120자 · 516화면
この時のムク犬は、もはやお寺へ逃げ込んだ時のように、痩せて険しいムク犬ではありません。火水になって働く大勢の働きぶりと、漲り返る笛吹川の洪水とを見比べては、自ら勇みをなして尾を振り立てながら、時々何をか促すように慢心和尚の面を仰ぎ見るのであります。
「和尚様、何か御用があったら及ばずながら私をお使い下さいまし」ムク犬は和尚に、自分の為すべきことの命令を待っているかのようでありました。
そのうちに何を認めたかこの犬は、岸に立って流れの或る処にじっと目を据えました。
堤防の普請にかかっていた慢心和尚をはじめ雲水や百姓たちが、
「あ、あの犬はどうした、この水の中へ泳ぎ出したわい」
さすがに働いていた者共も一時手を休めて舌を捲いてながめると、滔々たる濁流の真中へ向って矢を射るように泳いで行く一頭の黒犬。申すまでもなくそれはムク犬であります。
ムクがこの場合、なんでこんな冒険をやり出したのだか、それは誰にも合点のゆかないことです。その濁流の中を泳いで行くめあては、今しも中流を流れ行く一軒の破家の屋根のあたりであるらしく見えます。
草屋根の流れて行く方向へ斜めに、或る時は濁流の中にほとんど上半身を現わして、尾を振り立てて乗り切って行くのが見えました。