후리가나로 읽는 일본 고전
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 183,656자 · 363화면
洗面所で逢っても、廊下で逢っても、風呂場で逢っても、お早うございますの挨拶さえもする人は少ない。こちらで声をかけると、迷惑そうに、あるいは不思議そうな顔をして、しぶしぶながら返事をする人が多い。男は勿論、女でさえも洗面所で顔をあわせて、お早うはおろか、黙礼さえもしないのがたくさんある。こういう人たちは外国のホテルに泊まって、見識らぬ人たちからグード・モーニングなどを浴びせかけられたら、びっくりして宿換えをするかも知れない。そんなことを考えて、私はときどきに可笑くなることもある。
客の心持が変ると共に、温泉宿の姿も昔とはまったく変った。むかしの名所図絵や風景画を見た人はみな承知であろうが、大抵の温泉宿は茅葺き屋根であった。明治以後は次第にその建築もあらたまって、東京近傍にはさすがに茅葺きのあとを絶ったが、明治三十年頃までの温泉宿は、今から思えば実に粗末なものであった。
勿論、その時代には温泉宿にかぎらず、すべての宿屋が大抵古風なお粗末なもので、今日の下宿屋と大差なきものが多かったのであるが、その土地一流の温泉宿として世間にその名を知られている家でも、次の間つきの座敷を持っているのは極めて少ない。