후리가나로 읽는 일본 고전
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 183,656자 · 363화면
や床几や花筵などを持ち出して来て、門のまえに一時の避難所を作った。わたしの家でも床几を持ち出した。その時には、赤坂の方面に黒い煙りがむくむくとうずまきっていた。三番町の方角にも煙りがみえた。取分けて下町方面の青空に大きい入道雲のようなものが真っ白にあがっているのが私の注意をひいた。雲か煙りか、晴天にこの一種の怪物の出現を仰ぎみた時に、わたしは云い知れない恐怖を感じた。
そのうちに見舞の人たちがだんだんに駈けつけて来てくれた。その人たちの口から神田方面の焼けていることも聞いた。銀座通りの焼けていることも聞いた。警視庁が燃えあがって、その火先が今や帝劇を襲おうとしていることも聞いた。
「しかしここらは無難で仕合せでした。ほとんど被害がないと云ってもいいくらいです。」と、どの人も云った。まったくわたしの附近では、家根瓦をふるい落された家があるくらいのことで、いちじるしい損害はないらしかった。わたしの家でも眼に立つほどの被害は見いだされなかった。番町方面の煙りはまだ消えなかったが、そのあいだに相当の距離があるのと、こっちが風上に位しているのとで、誰もさほどの危険を感じていなかった。