후리가나로 읽는 일본 고전
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 183,656자 · 363화면
但し本当の怪談ではないらしい。いや、本当でないに決まっている。
わたしが二十歳の九月はじめである。夜の九時ごろに銀座から麹町の自宅へ帰る途中、日比谷の堀端にさしかかった。その頃は日比谷にも昔の見附の跡があって、今日の公園は一面の草原であった。電車などはもちろん往来していない時代であるから、このあたりに灯の影の見えるのは桜田門外の派出所だけで、他は真っ暗である。夜に入っては往来も少ない。ときどきに人力車の提灯が人魂のように飛んで行くくらいである。
しかも其の時は二百十日前後の天候不穏、風まじりの細雨の飛ぶ暗い夜であるから、午後七、八時を過ぎるとほとんど人通りがない。わたしは重い雨傘をかたむけて、有楽町から日比谷見附を過ぎて堀端へ来かかると、俄かにうしろから足音が聞えた。足駄の音ではなく、草履か草鞋であるらしい。その頃は草鞋もめずらしくないので、わたしも別に気に留めなかったが、それが余りに私のうしろに接近して来るので、わたしは何ごころなく振り返ると、直ぐうしろから一人の女があるいて来る。
傘を傾けているので、女の顔は見えないが、白地に桔梗を染め出した中形の単衣を着ているのが暗いなかにもはっきりと見えたので、私は実にぎょっとした。