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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
こうまで殺風景な、下司な部屋でなくてもいいんじゃないか。俺はそれを言いたかったのだ。
だが、ここへ来る男には、部屋なんかどうでもいいのだ。女だけいればいいのだ。女だけが目当てなのだ。クララもそういう男に買われる女なのだ。
「さ、総あげだ」
ベッドの上に砂馬は昂然と大あぐらをかいていた。
「スケナゴ(女)を、みんな早く呼んでこい」
わざとヤクザ言葉を使うと、
「大きな声出すんじゃないの」
女は姐御気どりでたしなめた。
「お客が来てるのよ。営業中よ」
「空くまで、待ちぼけか」
砂馬はネクタイをゆるめて、
「オサトでも食うか」
「オサツ?」
女は「お里」を知らなかった。「義経千本桜」の鮨屋の段から来た隠語である。
「ヤキイモじゃねえよ。スシだよ。スシでも食うか」
「おばさんに、そいじゃ、頼んでこよう。何人前?」
「適当に注文しな」
鷹揚に言って、
「ビールも飲むぞ」
「あいよ」
と女は出て行った。クララが俺に寄り添って来た。安香水のにおいがツンと鼻に来た。それは俺にこの女が安淫売なのだということを告げる。俺は一生懸命、この女が安淫売なのだということを自分に言いきかせようとしているのだ。