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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

と言った。まさかとはなんだいと俺は言った。瀬良照子をクラ替えさせた男は、文士なのか?

次の日、俺はひとりで斎田慷堂の家へ行った。二階へ通されると、先客があって、それは若い陸軍の将校だった。赤い頬をした童顔の将校を、

「北槻中尉……」

と慷堂は俺に紹介したが、軍人嫌いの俺は、むっとした顔を、わざとそっぽに向けて、

「はあ」

心のなかでは、なんだ、こんな青二才が中尉? と(肩章の二つ星で、はじめから中尉とは分っていたが)、新しく思いきり軽蔑していた。

「これは、加柴四郎君というあばれん坊だ」

と俺をそう紹介した慷堂は、俺がむっとしたのを面白がっているようで、軍人が嫌いならボルも嫌いな俺を一層むっとさせようとするかのように、

「この北槻中尉はレーニンの研究家だ」

「先生」

と中尉が、低いが強く、

(こんな、えたいの知れない男に、そんなことをおっしゃっちゃ困ります)

と言わんばかりだった。

「研究しとると言っただけで、実行しとると言やせん」

すでに酒がはいっているらしく、ひどく好機嫌の慷堂は、今度は中尉をからかうみたいに、

「この加柴君は福井大将を狙撃した虚無主義者の仲間だ」

「ふむ」