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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

それが俺を砂馬に会わせたのだ。

「あの娘は、その後、どうしたい」

その砂馬に俺は、

「ちがうんだよ」

と言ったが、砂馬は聞き流して、

「斎田さんのところへは、あの娘のことを聞きに行ったんじゃないのか」

さっきは、斎田慷堂のところへ、何しに行ったと聞いた砂馬だ。

「そうだけどさ。ちがうんだったら」

俺は革命家廃業みたいな自分の現在が、自分でたまらないのだ。だが、それをリャク屋の砂馬に言う気にはなれない。

すると当の砂馬が、

「分った、分った」

またそう言った。

腫れ物にさわるみたいな言いぐさはやめてくれと、叫びたかった俺に、

「お互い、女の問題じゃない。俺もほら、加柴と一緒に、私娼窟、女郎屋、待合と回って歩いたことがあったな。あのころの俺は、自分をなににぶっつけていいか分らなくて、やけになったもんだ。今の加柴はあのときの俺と同じなんだろう。あのときに、そうだ、あの娘に初めて会ったんだな」

酒が来た。砂馬はさっそく銚子に手をやって、

「うえー熱い」

指を耳にあてて、

「すごい熱燗だ」

俺はその銚子をむんずとつかんで、火傷しそうに熱いのを、なにくそと我慢して、砂馬に酒をさして、