轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「品よく」(とは砂馬の言葉だが)家におさまっていて、
「ちょいと、ちょいと」
女の顔だけが見える小窓から、通りすがりの男たちに呼びかける。
「ちょいと、兄さん」
「ちょっと、ちょっと、眼鏡の旦那」
両側から誘いの声がかかる。ちょんの間なら、一円五十銭でも自分を売ろうという呼びかけである。
「ちょいと、洋さん」
洋服さんという意味である。ちょっと、その洋服を着た旦那――という呼びかけである。きょう日とちがって、和服の着流しがまだまだ多かったころである。
「ちょっと寄っといでよ」
「ほらほら、ちょっと、ここをのぞいてごらんよ」
日の暮れるのが早い季節で、暮れてから大分になるが、時間としてまだ宵の口だ。だのに、細い路地には早くも人がひしめいていた。
路地を行く男は、こうした両側の小窓から、女たちの眼と声の一斉射撃を浴びるので、これでなかなか度胸がいる。路地の真中を、ほかの用で歩いているかのような足どりで行くのは、こういう場所にまだなれない男である。ときどき、ちらっと横目で小窓のなかをのぞく。声をかけられると、大ゲサに飛びのいたりする。なれた男は、雨降りの軒伝いみたいにして、いちいち小窓をのぞいて行く。