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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

買いたい女を物色する。お、いい女だねえと言ったりする。これは逆に、寄る気のないちゃらんぽらんである。心得た女は、いけすかないねえとか、場所ふさげをするんじゃないよとやり返す。

俺は、まあ、横目使いと軒伝いの中間みたいなものだった。

気のせいか、この路地には、トロ(精液)の臭いとそれから消毒液の臭いが、むーんと立ちこめているみたいだった。女に飢えた男たちの息、熱っぽい人いきれもくさい臭いを放っているにちがいない。

路地は迷路のようにつづいていて、家と家の間の、ひと一人やっと通れる狭い道には「抜けられます」と書いてあった。道の奥にも、買い手を待っている女がひそんでいることを、そうして示しているのだ。

軒さきに鬼婆みたいなのが立っていた。そのうしろにセーラー服の少女がしょんぼりと顔を伏せている。初見世なのである。あるいは、初見世ふうにして売ろうとしているのだ。少女は黒っぽい素足に赤い鼻緒の下駄をはいていた。

「どうだい」

と俺は言った。

「駄目だよ」

と砂馬は言った。年増じゃなきゃ、駄目だと言った。

セーラー服の少女は、近づいてその顔を見ると、少女とは言えない齢の顔だった。