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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
まさか、そいつを持ってかれはしないだろうな。一刻も早くたしかめたかった。はやる心を、波子の手前、おさえていると、
「ないわよ」
と言って、波子のほうが、その地袋に顎を向けて、
「あけてごらんなさい」
「なんだって……」
ころがるように飛んで行って、その小さな袋戸棚をあけて、
「ない!」
尻餅をついたのは、われながら醜態だった。
「そりゃ、ないわよ」
面白がるみたいに波子は言った。薄ら笑いを浮べている波子を見ると、俺はかっとなった。
「なにすんのよ」
俺は波子に飛びかかって、その頸を両手でしめあげている自分に気づいた。そんな自分に俺は恐怖を覚えたが、当の波子の顔には恐怖はない。思わず手をゆるめた俺の耳に、このとき波子はこう言うではないか。
「あたしがちゃんと隠しといたから大丈夫」
「どこへ隠したんだ」
俺の手は波子の二の腕をつかんでいた。
「あぶないとこだったわ」
俺に腕をつかませたまま、波子は半開きの地袋に眼をやって、
「昨日、この部屋の掃除をしてたら、そこに変なものがあるんで、何かしらと?」
「あけて見たのか」
もちろん、ピストルを裸でおいたわけではない。
「びっくりしちゃった」