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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
雪の表面にぽっかりと穴があいている。丸い穴はその辺にいくつかあって、穴から湯気が出ている。牧夫は雪をかきわけた。細く深く穴は雪のなかにつづいていて、掘っても掘ってもきりがないかのようだったが、牧夫の身のたけ以上の深さまで掘り下げたとき、そこになんと、道産子が何頭か身をすりよせて生きていた。雪に埋れ、雪の下に身を埋めながら生きていた。
その馬たちの息が雪をとかして、一条の穴になっていたのだ。そしてその穴を通して馬は地上の空気を吸っていたのだ。
ほかの穴の下にも、馬がいた。雪のなかで生きていた。俺はこの馬の話を――雪に埋れた馬がお互いのタテガミや尻尾を食って生きて行くという話と一緒に波子にした。あたかも俺ひとりではこれらの話の持っている重さに堪えられないかのように波子にも話した。
「えらいわねえ」
と波子も言った。俺と同じように、馬に感心したのである。こんな北の果てに波子を連れてきて、事実、雪に埋れた生活を波子に強いていた俺は、道産子にむごい雪中放牧をさせている人間と同じなのだが、波子はその道産子のほうに感嘆を寄せた。
俺もその道産子のように生きようと思った。