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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

眼やにまできたならしくついている。そういう俺だって、生臭いにおいが身体にしみついて、まるで漁船の雑夫だ。こんなしおたれた恰好をした俺を、往年の加柴四郎だと思う奴はないだろう。

「あの奥さんに頼まれて、清さんとの間の手紙のやりとりの仲介をしているらしいな」

俺が探りを入れると、

「いけねえと言うのか」

やっぱりそうかと俺は大福をパクリと食った。コナが鼻にはいって、ハクションとくしゃみをして、

「ここでこんな話はまずいかな」

いえ、かまいませんと言ったのは屋台のおやじで、

「わしは、百成さんのところで働いてたもんです」

「そいつは、まずい」

「ちっともまずくはないんで……わしはこんなカタワになって、いえ、カタワにされて、お払い箱になったんで……」

むごい親方だとおやじが言ったあと、いっとき、そこに沈黙があった。

「変な奴が俺のところに来たんだ」

俺が口を開くと、金原は、

「俺のところへも来た」

「矢萩が……?」

「特高だよ。斎田慷堂と何の関係があるのかって聞きに来やがった」

なんて答えたのかと俺は聞いた。

「こう言ってやった。俺も今じゃ右翼だ。へたな扱いをすると、ためにならねえぞ」