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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
玉塚は原稿料を持ってきてくれた。俺はその雑誌がほんとは原稿料など出さない同人雑誌に近いものであることを知らなかった。俺には特別に原稿料を出してくれたのか。それとも玉塚が原稿料という形で俺に金をくれたのか。
俺はひきつづき野中薫の名で詩を発表した。
アパートへの見舞い客はこの玉塚だけではなく、慷堂先生もわざわざ来てくれたが、今は丸万留吉の来訪を語ろう。波子がちょうど俺の身のまわりの世話でアパートに来ていたときだ。きたない部屋に丸万を迎えたときはしかし、波子は階下に行っていた。テキヤがすっかりイタについた丸万しか知らなかった俺は、りゅうとしたその背広姿のランバリ(立派なみなり)に眼を見はっていると、溲瓶を洗いに行っていた波子が、その不恰好な醜態なガラス瓶をぶらさげてはいってきた。いやだねえと俺はしかめ面をして、
「女房だ」
と丸万に言い、波子には丸万のことを、
「俺の同志だ」
と言いかけて、おや? ――波子と丸万とがすでに両方とも、おや? といった顔だった。
やあ、これは……と丸万がさきに口を切ると、波子が俺に、
「お店へよくいらして下さるんですよ」
「よく、でもないが、ま、時々……」