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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
現役の陸軍大臣を尾垣首班の内閣には出さないと軍中央部は取りきめた。そうなっては組閣は不可能なのだった。
このような軍の横暴はしょせん、二・二六事件のせいなのだった。皇道派が軍中央部から一掃され、それを機会に他の派閥もなんとなく解消して、統制派の意図する統制が実現したのである。
そのころ、俺は砂馬から呼ばれて、その家へ行った。会って話したいことがあると言う。行くと、その家は、なにさまのお屋敷かと見紛うばかりのマブドバ(大邸宅)だった。事実、それは没落した旧大名華族の屋敷を砂馬が買い取ったものだが、立派なその屋敷に、砂馬の子分の、柄の悪い男たちがうろうろしているのは、ぶちこわしだった。
「どうだ、身体のほうは」
大きなソファにもたれた砂馬は親分の貫禄がすっかり身についていた。俺なんかは何か尻が落ちつかない贅沢なソファに、ゆったりと快さそうに腰かけて、
「大分、よさそうだね」
「身体はなおったが……」
と俺は言った。二・二六のとき俺は無理な外出をしたが、冬だったせいもあるのか、あれでまた病気がぶり返すということもなく、逆にあのため体力がついた感じだった。北槻大尉らの処刑というショックも、病気にはこたえず、かえってなまった肉体がしゃんと立ち直った。