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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
俺の心のなかには、怒りやくやしさ、それに涙もまじった狂暴なものが渦巻いていたからだ。だが、外部の狂暴は、俺の心のなかの狂暴を打ちくだいてくれることで壮快なのであった。
慷堂の処刑を知った日も、俺は岩に腰をおろしていた。ときには波しぶきがかかるが、ここまでは荒れ狂う波もおそってこない。俺が腰かけた岩の周囲には、小さな巻貝がいっぱいくっついていた。あらかたはアズキぐらいの小ささで、それがびっしりと岩にくっついている。カサブタみたいに見え、岩が皮膚病にかかったみたいに見える。
この巻貝を漁夫はイソダマと呼んでいた。ベーゴマぐらいの大きさになると、塩うでにして食う。俺もお裾分けで(――なんて言うと、塩漬け死体が思い出される)そのイソダマを食ってみたが、なかなかうまかった。固くフタをしめているのを針で突っついて、中身を出して、つるりと食うのだ。
ひき潮のときに取るのだが、子供でもバケツいっぱいぐらい、すぐ取れる。海のなかにひそんでいれば、そう簡単に取られはしないだろうに、子供にもすぐ取れる、取られやすいところにいる。
その巻貝の子供が、まだ小さいために取られずに放置されて、俺の周囲の岩に群がっていた。