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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
べらべらと、そんな感じでロクはしゃべり立てた。
「そいじゃ、いよいよ、俺のほうから上海へ会いに行ってやらあ」
と俺はうそぶいた。驚くロクに、
「タマゲることはねえよ」
そんなことで驚いちゃいけねえと俺は言って、
「上海へ行ったら、その男に、おめえもあのとき片棒を担いだことを言ってやらあ」
「滅相もない。いやですよ、そんな」
「いやか。いやなら口どめ料を出しな」
俺はロクの胸倉を取って、
「今すぐ出すんだ」
「お金ですか」
とロクはとぼけた。俺はネクタイをつかんでロクの首を締めあげて、
「上海から持って来た金じゃ、どうせろくなことで儲けた金じゃねえだろう。早く出しやがれ」
「人殺し!」
ふざけたような声でロクは言って、
「そんな乱暴しないで。出しますよ。分りましたよ。お金ですむことなら……」
「なんだと」
「お金ならちゃんとここに……」
ウチパア(内ポケット)に手を差しこんで、
「支度金をちゃんと……」
口をすべらせた感じで、
「いえね、あんたのことだから、あたしの話を聞くと、逆にきっと、上海へ行くって言い出すにちがいないと思って、お金を用意して来たんですよ」
「なんだ、この野郎。