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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
熱気がむーンと顔を蔽う。
「なにを、こう騒いでいるんだ」
「騒いでいるわけじゃない。シナさんは声が大きいんだ。どこでも、こうだ」
と丸万は言った。
異様な喧騒――上陸第一歩の印象はそれだった。すさまじいその喧騒は、中国人のえたいの知れないエネルギーを俺に感じさせた。
冬の根室に俺が汽車から降り立ったときの印象と、ふと対比された。根室は、静かというより、骨にしみ通るような寂寥が、寒気とともに迫ったものだ。
ここでは、すごいエネルギーが俺を圧倒した。圧倒されてなるものかと、肩を張った俺に、
「車が待たせてあるから、それに乗って、とにかくメシを食いに行こう」
と丸万が言った。俺は喧騒に対抗する声で、
「そいつは豪儀だ。オオマクレーといくか」
大食いのことを根室のカニ工場の女工たちは、青森あたりの方言なのか、オオマクレーと言っていた。
大型のすばらしい自動車が待たしてあった。楕円形のナンバープレートには、数字の前にDとあった。
その車の隣りに、新聞社の社旗をつけた車が置いてあって、風巻がそこに立っていた。迎えに来た記者が丸万の車のDを指さしながら、風巻に何か話していた。