轻松读懂日语经典作品
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
そのバーは北四川路のビルの地下室にあった。帝政時代の将軍服のようなものを着込んだ白俄(白系ロシア人)のドア・ボーイがうやうやしく俺を迎えた。はいるとそこに、ホテルみたいに、オーバーを預けるクロークがあって、今はそんなのはちっとも珍しくないけど、当時としてはさも豪奢な、いかにも勿体ぶったものものしさを感じさせた。しかし内部に一歩、足を入れると、これがぶちこわしだった。東京で言ったら、てもなく大正時代のカフェーだった。
まるで塀みたいに高い背をつけた長椅子を、テーブルをはさんで向い合わせたいわゆるロマンス・テーブル、間が抜けた広さの古風なそれが、汽車の座席みたいに並んでいて、それにそれぞれ陣取った客と女給が(いずれも日本人――と、ここは上海だから、ことわっておく必要があろうか)大声で喚き散らしている。流行歌のレコードが、があがあとがなり立てているので、おのずと声も大きくなるのか。天井にはバカバカしい造花が、それも春の桜と秋の紅葉が一緒くたに飾りつけてあった。これはやはりカフェーと言ったほうがよさそうだ。
「おひとりですか」
とフェエビリ(女給)が、これは何も大正の女給スタイルではない、洋装の日本娘が言った。