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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
このとき、
「はい、もう、いいですよ」
背後から、あいにくとこの日は看護婦が言って、真鍮ののう盆を出した。固くなった俺のヨシコを見て、看護婦は顔をそむけた。
外は暗くたそがれていた。俺はクララのことを思いつづけた。
なぜ今まで気づかなかったのだろう。あのクララは、自分で知らないで、俺にリン病をうつしたのだ。つまり自分で知らないで、誰かからリン病をうつされていたのだ。
だが、そうなるとまた、それは、俺と寝る前に、俺に許したと同じような許し方で自分を抱かせた男がクララにはいたのだということになる。俺は嫉妬で胸が熱くなった。自分の推察の招いた嫉妬が自分を苦しめた。
その男というのは、富江の言っていた「悪い男」か。クララをどこかへクラ替えさせた男……。
そいつが病気持ちだったのだろう。病気持ちと男は自分で知っていて、クララを抱いたのだ。俺は急にまたクララが可哀そうになった。クララは男が病気持ちとは知らなかったのだろう。だから俺に病気をうつそうとは夢にも思わなかったにちがいない。
男にクラ替えさせられるクララは、俺とこれで別れねばならぬとあって、俺にああした最後の抱擁を許したのだろう。