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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

どうせすぐに放り出す女だ、二人とも、野良猫のように放り出してやる、そしてこっちはおみのと」

彼はそこで息をひそめ、片手で腫れた眼を押えながら、じっとなにか考えこんだ。

「そうだな」とやがて彼は低い声で、さぐるように、ゆっくりと呟いた、「それも手だ、うん、あの娘にはまだ気ごころの知れないところがある、そうだ、この顔を見せれば本心がわかるかもしれない」

得石は持っている盃をみつめた、「本当におれが好きで、おれと夫婦になるつもりなら、この顔を見たくらいであいそづかしはしないだろう、――もしこのざまを見て笑うか、あいそづかしをするようなら、いまのうちに諦めるほうが身のためだ」

彼は手を叩いて酒を命じた。

「まだ刻はたっぷりある」と彼は自分をなだめるように云った、「もう少し考えてみよう、なにしろ相手はまだ娘だからな」

得石はさらに二本飲んだ。

箸がころげても笑う年ごろ、という言葉が頭にひっかかっていた。たとえおみのがしんじつ自分を愛しているとしても、そういう年ごろであってみれば笑いだすかもしれない。そんなことで本心をためすなどというのは罪だ、と彼は思った。しかし一方では「泊るつもりで来てくれ」