轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

十一

「いいと云うまで、来ないで下さいね」

得石は肱枕をしたまま頷いた。

「おい、海野先生」と彼は口の中で低く呟いた、「とうとう運をつかんだな、大大吉の運だ、あっぱれだぞ」

得石の顔がほぐれ、唇に微笑がうかんだ。彼は眼をつむって欠伸をし、それから吃驚したように眼をみひらいた。

「おみのさん」と彼は呼んだ。

返辞は聞えず、得石は起き直った。

「おみのさん」とまた彼は呼んだ。

四帖半でかすかに、「どうぞ」と云う声が聞えた。

得石は立ちあがってよろめき、よろめきながら濡縁へ出ていったが、戻って来ると、いっそう蒼白くなった顔に、非人間的な、欲望のむきだしな表情があらわれていた。彼は足元に注意しながら、四帖半の襖をあけ、うしろ手にそれを閉めた。

おみのは長襦袢になって、夜具の枕許に坐っていたが、得石がはいって来ると、彼の寝衣を取って立ちあがった。得石は構わず歩みより両手でおみのを抱こうとした。

「だめ、着替えてから」

「そのまえに、ちょっと」

「だめですよ」おみのは横へ逃げた、「戸口の鍵も掛けてないじゃありませんか」

「人なんか来やあしないさ」

得石はおみのを捉まえようとして、灯のはいった丸行燈に躓き、慌ててそれを押えた。