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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

「でもあの人お店へゆくことよ」

「いいとも」と彼は強く頷いた、「お倫さんが本当に承知してくれるなら、浅草橋の叔父のところへいって話をする、嫁を貰って身を固めるとわかれば、おやじだって勘当は解いてくれるにきまってるよ」

「そんなにうまくいくかしら」

「うまく、――そうだ」清一は膝を叩いた、「いまの騒ぎはとんだ茶番だったが、おかげでお倫さんのいどころがわかった、もう隠してもだめだよ」

「湯島横町、うまく知れちゃったわね」

「それだけは与力さまさまだ」と清一が云った、「これからは訪ねていってもいいだろうね」

「いつも云ってるでしょう、店のほうから人がようすをみに来るのよ」とお倫が云った、「もしも清さんの来ているところをみつかりでもしたら、なにもかもめちゃめちゃになってしまうんですもの」

「いいじゃないか、どうせ私といっしょになれば、親の世話になんかならずに済むんだ、そうだろう」と云って、清一は急に盃を置き、お倫のほうへにじり寄った、「――それよりちょっと」

「いや、清さん」とお倫はあまえた声で云った、「よして、ここを出ましょう」

「ここを出るって」

「あんなことがあったから気持が悪いの、あたしのうちへいきましょう」